観賞用でなく、使っていただきたい小刀です。
実用を意図しており、小柄の形に仕上がっています。
柄と鞘は銘木にて製作。刀身は、藤田刀匠が日本刀作刀に用いる自家製鋼の鋼が用いられています。
現代において古式製鉄を工業的に行っているのは島根県での「日刀保たたら」のみです。
日本刀の材料としては古式の鉄を使う必要があり、全国の刀匠は島根の玉鋼を注文して仕入れるのです。
しかし、独自の研究、挑戦のために、鉄を作ること自体から自分で行う刀匠や工房も少数ですがいらっしゃるのです。
自家製鋼、文字にすればたった4文字ですが、砂鉄と木炭を炉に入れ鉄を得る古式の製鉄法を個人や小さな工房で行うのは多大な労力と試行錯誤によるノウハウの蓄積が必要です。
情熱がなければ続けられません。
ご紹介する作品は、この自家製鋼による材料を使っております。
本来古式の鉄を折り返し鍛錬した刀には波紋や鍛肌が現れるのですが、今回の研ぎ、仕上げは刀匠ご自身によるものですので刃文や鍛肌(折り返し鍛錬で多層になった鉄素材の縞模様)の観察はやや難しいです。
専門の日本刀研ぎ師が研磨すれば美しい波紋や鍛肌が現れるのですが、これを行なってしまうと「実用」していただける価格には収まらなくなってまいりますのであえてこのような仕上げに留めております。
お手入れは通常の刃物と同じように、使用後の水分や封書の糊などをきれいに拭っていただき、鞘に収めてください。
長期保管の場合は刀剣用の油を薄く塗っておくと良いでしょう。
研ぎは、実用品として購入者ご自身で研いでいただくことができます。
槌で叩いて鍛えた鍛造の刃物は市販の鉄板材加工よりも硬く強靭で、研ぎ方によっては非常に鋭い切れ味となります。お取り扱いには十分ご注意ください。